眠っている時に見る、夢みたいなお話を想像してみる試みです。
夢って不思議ですよね。
通常時にはとても辿り着けない発想があります。
覚醒時もその発想力、想像力に近づけたら面白そうだと思うのです。
発想力を養う練習になる事も期待しています。
一話一話、異なるお話でオムニバス形式になっております。
それでは、第一夜~第五夜まで、おやすみなさい。
良い夢を。
第一夜
私は、四角い部屋にいる。
壁から壁までは何十メートルもありそうなほど広く、薄暗く、天井も見えないほど高い。
コンクリートのような壁が空気をうすら寒く感じさせ、部屋のトーンも幾分か落としていた。
床は芝生で覆われていた。
部屋の一角に、その芝生から生えた無数の細い糸があり、それらはみな天井に向かって伸びている。
糸の先にはそれぞれ大小様々な風船が一つずつ付いていた。
青とピンクの、大きさと高さの違う風船たちが、無数にゆらゆらと揺れている。
風船たちの揺れを何となく眺めていると、背後から人がやってきて風船にぶつかって遊びだした。
続々と人がやってきては風船にぶつかっていく。
風船までの高さは低くとも3mほどであろうか。
みなゆっくりと風船に向かって歩き、足取りは変わらないのに途中から加速して斜め上へと少しずつ上昇していく。
一直線に風船に向かって、ぶつかっている。
歩いて行ったそのままの姿勢でぶつかっては跳ね返り、地面をトランポリン代わりにしてまた跳ね返り、再三ぶつかっている。
そのうちに人々は跳ね返る途中で手と手を取り合い、輪になって回り出した。
空中に浮かんだまま、ステップを踏んで、くるくると回っている。
回るたびに泡が出ている。
たくさん回れば回るほど泡が出て、あっという間に部屋は泡だらけになってしまった。
いつのまにか隣に立っていた男性に、これで手を洗いますかと聞かれたので、肌に良いのならぜひ、と答えた。
そして、微睡から目を覚ました。

第二夜
色とりどりのチーズが降っている。
チーズには大中小、丸三角四角などさまざまなものがある。
チーズはふらふらと降ってきて、地面に辿り着くと、どろどろと溶け出し、そのうちに乾燥した大地に吸収され無くなってしまう。
少年が花柄のチーズが当たりだ、と教えてくれた。
当たりを探して降り注ぐチーズを眺めていたが、いっこうに見つからない。
少年はすでに花柄のチーズを両手いっぱいに抱えている。
少年は花柄のチーズをリュックにしまい込みながら、こんなにたくさんあるのにどうして見つけられないの?と言って履いていた靴下をくれた。
私はきっと自分が人間だから見つけられないのだと思った。
でも花柄のチーズが欲しかったので続けて探していると、黄色い鳥がやってきて、こっちにあるよと教えてくれた。
ついていくと木の枝に挟まった水玉のチーズがあった。
これじゃないと言ったが、鳥はこれが花柄のチーズだと言って譲らない。
困っていると水玉のチーズが口を開いた。
ややこしくてすみませんが、私の名前は花柄のチーズです。
なるほどそうでしたか。
私は水玉の花柄のチーズを持って帰る事にした。
家に着くと、台所のカトラリーケースの中から大きなスプーンを取り出し、その上に水玉の花柄のチーズを乗せた。
すると水玉の花柄のチーズが、お願い事があるのですが、と言った。
お願い事とは何かと聞くと、私は取材を受けたいのです、と言う。
私は早速ビデオカメラを持ってきて水玉の花柄のチーズを撮り始めた。
正面から撮ろうとすると、頑なに斜め右を向く。
どうしたの?と問いかけると、もう一つ願いを聞いてくれませんか、と言った。
今度の願いは何かと聞くと、手を叩いてくれませんか、と言う。
私がビデオカメラをテーブルの脇に置き、その場で手を叩くと、水玉の花柄のチーズはエンジン音を立てて消えてしまった。
しまった、逃げられた。
チーズにしてやられた。
しかしカメラが一部始終を捉えていたので、水玉の花柄のチーズは罪に問われる事になるだろう。
少し哀れに思った。
そして、微睡から目を覚ました。

第三夜
クレープが好きな猪は今、無数の巨大な綿菓子に囲まれていた。
猪としてはクレープが食べたいのだが、実際にはたくさんの大きな綿菓子に囲まれてしまっていた。
猪には特殊な能力があった。
それは望めば何かしらの物が手に入るという能力であった。しかし必ずしも望んだものが現れるわけではなかった。
そんなわけで3つのささやかなクレープを望んだ猪は、今や無数の巨大な綿菓子に苛まれる結果となった。
四方を隙間なく囲む綿菓子の壁。
一番の問題は、現状ここからの脱出が容易には出来そうにない事である。
この綿菓子は硬い。硬い上に人参の味がする。食感もまるで人参のようだ。
猪は人参を食べない主義であったのに、よりにもよって人参の味と食感のする綿菓子に囲まれている。
猪は、ここから出るにはこの綿菓子の壁を食い破るしかないと思った。
これは人参ではなく、綿菓子である。
これは人参ではなく、綿菓子である。
自分に言い聞かせながら食べ進んでいると、ふとある事に気が付いた。
綿菓子の中身は濃いオレンジ色をしている。まるで人参のようではないか?
人参の味、人参の食感で人参のような色。
これはもしや綿菓子などではなく、人参そのものではないのだろうか?
そう思った瞬間、自分の身体の違和感に気付く。
この手は蹄ではない。ふわふわの茶色い毛に覆われていて丸い。足を見ると同じように茶色い毛の丸っこいものがあった。
猪は顔を触ってみた。
やはり全体がふわふわの毛で覆われており、頭の上部に薄っぺらく縦に長い耳がついている。
そう、猪はうさぎだったのである。
私はうさぎだったのか!
うさぎであるならば、人参を食べる事に異議はない。
うさぎがそう思うやいなや、周りを囲んでいた綿菓子が消え、3つのささやかなクレープが現れた。
しかしうさぎは、自分は自分らしくありたいと思い、人参を食べたいと望むが、クレープが人参に変わる事はついぞなかった。
そして、微睡から目を覚ました。

第四夜
今日のおうし座はラッキーデイ!
リビングのテレビが今日の占いを放送している。
リビングのテーブルに家族が集まっている。
父と母、年頃の娘はそれぞれの椅子に座り、みなテーブルに肘をついてテレビを眺めている。
母が父に、仕事行かなくてもいいの?と聞いた。
父は母に、今日は非番だからと言った。
娘は母に、お母さんは今日仕事行かなくていいの?と聞いた。
母は娘に、今日はお休みしちゃったと言った。
娘が、私も休みだからみんなで朝ごはん作ろうよと提案すると、父と母は賛同した。
みんなでキッチンへ向かうと、轟音とともに砂煙が舞っていてキッチンの奥に作業員の姿が見えた。
母は、そうだった、キッチンは工事中だったね、と言った。
すると家族に気付いた作業員が手を止めて家族のもとにやってきて、朝ごはん作りますか?と聞いてきた。
娘が作りたいです、と答えると作業員はオーケー、では踊りましょうと言ってタップダンスを踊り始めた。
父はそのリズムにマラカスを振って応えた。
母はそれに合わせてリコーダーで音楽を奏で始めた。
娘が困惑していると、作業員が手を差し出して来た。
爽やかな笑顔に押されて娘は作業員の手を取った。
作業員の足さばきは見事だった。
娘をリードしながらくるくると踊っている。
踊り続けていると、いつのまにか薄暗いダンスホールでスポットライトを浴びていた。
娘も乗って来て、2人はまるで社交ダンスのトップダンサーのようだ。
また踊り続けていると、いつのまにか荒野にいて、周りを柵で囲われていた。
背後には荒ぶる闘牛と、闘牛の突進を華麗にかわす闘牛士が見える。
作業員はいつのまにかいなくなり、娘は赤いドレスに身を包んで踊り続けている。
まるでプロのフラメンコダンサーのようだ。
娘がひとしきり踊り終わると、闘牛士と牛と対面した。
闘牛士は父であった。
父と牛が申し訳なさそうに立っている。
父が、ごめんな、母さんこんなんなっちゃって、と言った。
娘は牛が母である事に気付き、お母さん!と叫んだ。
牛の母は、ごめんね、母さん牛になっちゃったのと言った。
娘は、お母さんが牛でもいいよと言った。
父も、母さんが牛でも構わないよと言った。
母は、なら良かった、実は私、最初から牛だったのよ、と言ってメェメェ鳴くので、娘はそれは羊ではないかと思った。
そして、微睡から目を覚ました。
第五夜
何気なく庭を歩いていると、足元から碁盤の目のようなものが浮き上がってきた。
艶のある細い線がじわじわと芝生から滲み出てくる。
定規で引いたような真っ直ぐな線が何本も交差し合って地面の上を伸びて行く。
地上には一辺60cmくらいの正方形の群れが、見渡す限り一面にあっという間に出来上がってしまった。
私はひとつのマスの中央にいる。
そしてその私がいるマス一面だけが、うっすらと赤く光って、チカチカと点滅していた。
目の前のマスに足を進めてみると、片足を着けた瞬間からそのマスが赤く点滅し始める。
後ろのマスから残った足を離す。
すると足を離したマスは赤く光ったままになり、点滅を止めた。
いくつかマスを進んでみても同様だった。
足を踏み入れたマスが点々と赤く光っている。
一度訪れたマスに再び入ってみると、色は変わらず赤いまま、また点滅を始めた。
どうやら私の踏み入ったマスには赤い痕跡を残していく仕様らしい。
現在いるマスは点滅するようだ。
そうしてどんどんと赤いマスを増やしていると、ある時青いマスを発見した。
青いマスは連続していて、ひとつ見つけたと思ったらたくさんの青いマスに繋がっている。
そして青いマスのずっと先には黄色や緑の点々も見えた。
試しに青いマスに立ち入ると、そのマスは赤の点滅に変わった。
別の青いマスに移動すれば、やはりその場は赤の点滅になり、さっきいたマスはただ赤く光っている。
これは陣取りゲームのようだ。
もっと先には色とりどりのマスが見えている、つまりあちら側には何人かの人間が集まっているのではないか。
それぞれ別の色に光る、マスの持ち主たちだ。
そして自分と同じようにマスを移動し、色を付けてまわっているのではないか。
私は一体どんな人たちがマスの持ち主で、集まって何をしているのか、あれこれと想像しながら先へと進んだ。
するといくつかの点滅しているマスを発見した。
しかしどこにも人はいない。
しばらく観察していると、所々で色が点滅しては変化していっている。
自分のマスと同じ仕組みのようだ。
だがどこにも人らしき姿はない。
自分以外の他のプレイヤーは見えないのだろうか。
そう考えながら立っていると、正面からものすごい勢いで黄色の点滅が近付いて来た。
そのまま自分の立っている所に直撃する勢いである。
慌てて横に避けると、なんと黄色も同じ方向に曲がって来た。
それ以上は避ける間もなく、私の赤の点滅と黄色の点滅はぶつかってしまった。
身構えたが体への衝撃は無かった。
足元を確認すると、私のいるマスは黄色く光っていて赤の点滅は消えている。
黄色い点滅のマスは今も移動を続けているようだ。
私は呆然となって辺りを見渡した。
私が今まで移動して付けてきた赤いマスは消えていなかった。
しかしそれ以降、私がどれだけ移動してもマスが赤く変化することはもうなかった。
そして、微睡から目を覚ました。
あとがき
いかがでしたか。
夢のような時間を過ごしていただけましたか。
実態がなく、掴みどころもなく、記憶にもないようなあるような、めくるめく夢の世界。
魅力的ですね。
ゆめのようなはなしの一夜一夜に、イメージイラストを付けております。
第一夜、第二夜、第三夜は私の父の描いた絵です。
子供が描いた絵のようで素敵でしょう。
母にもイラストを依頼してみましたが、やんわりと断られました。
母は恥ずかしがり屋なのです。
父も第三夜までは気まぐれで描いてくれましたが、これ以降は面倒くさがっており、引き続き描いてもらうのは難しそうです。
残念。実に残念無念。
第四夜からは自分で描くことにしました。
お話とともに楽しんでいただけると嬉しいです。
今日見る本当の夢も、良い夢になりますように。
それでは、また来てくださいね。
ギャラリーなど紹介
ものをつくる活動をしています。
見に来ていただけると飛んで喜びます。
サイトまとめ
宇田青子の活動、サイトのまとめです。
気になるサイトがありましたら、ぜひ遊びに来てください。
それでは最後までご覧いただき、ありがとうございました!


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